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Lee-Byung-hun addicted

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君は僕の運命 第5話

『君は僕の運命』 第5話


「おう・・やっと来たか。待ってたぞ」
晋作は診察室に顔を出したビョンホンを見るとそう話しかけた。
「え?」
「お前仕事行くんだろ。大丈夫。揺の面倒は俺がちゃんと見ておくから心配するな。
お前は一生懸命働いて揺の高額な治療費を捻出して来い。」
「晋作さん・・・」
「あ・・礼は言うなよ。間が良けりゃ奪い取るつもりだから。ま・・そりゃ、冗談だけど。
・・・一番あいつが辛い時に一緒にいてやってくれてありがとう。あいつにはお前が一番の薬だからな。悔しいけど。」
晋作はそういうとビョンホンの胸を拳で叩いた。
「お前・・・痩せたな。身体・・・大丈夫か?」
「ええ。僕は大丈夫ですよ。ちゃんと揺の分まで食べてますし。この間人間ドッグ入ったばっかりじゃないですか。」
「そうだよな・・・。とにかく後のことは気にしないでやって来いよ。揺も退院させるから」
「えっ?」
「もうだいぶ抗がん剤にも慣れてきただろうから自宅での経口薬投与に切り替えるつもりだ。
もともと入院しなくても良かったんだけど。
お前がいないのに一人で病室に閉じ込めておくのは意味ないし。
余計きついだろうからな。
家に帰ったほうが身体に障らない程度に映画も観られるしPCも使えるから。
精神衛生上いいだろう。」
「本当に大丈夫なんですか?それで」ビョンホンは心配そうに訊ねた。
「ダメだったらすぐ俺が連れて帰るから心配するな。」
「そうですね。信用してお任せします。」
「・・でいつ帰る?」
「もうだいぶ前から呼ばれているので・・今日の夜帰ります。」
「揺には言ったのか?」
「これからです。」
「泣いてすがられたらどうする?」
「え?」
二人は顔を見合わせて笑った。
「そういう女じゃないからほおっておけないんだよな。」
晋作は意地悪そうに言うとビョンホンの脇腹をペンでつついた。


ビョンホンが病室に戻ると揺は座って本を読んでいた。
「何読んでるの?」
そう訊ねながら彼は揺のベッドに腰掛けた。
「ん?『風の影』っていう小説。なかなか面白いわよ」
「そう・・じゃ、今度僕にも貸してよ。」
「日本語版しか持ってないわ。」揺はそういうとクスクスと笑った。
「バカにしてるな。」ビョンホンは揺をちらっと睨んだ。
「バカになんてしてないわよ。・・でいつ帰るの?」
揺は本をペラペラとめくりながら何気なく訊ねた。
「今日・・・夜帰るよ。」
揺の手はふっと一瞬止まりまたすぐに動き出した。
「そう・・・頑張って仕事してきて。私も頑張るから。」
「ああ。晋作さんによく頼んできたから。退院許可してくれるって言ってたぞ」
「そう・・良かった。あなたがいなくなったらここにいても退屈だものね。やりたいことも溜まってるし。」
「だめだよ。無理しちゃ。」
「わかってるって。徐々に徐々に。でしょ。」揺はおどけて答えた。
そんな彼女に彼は黙って頷き微笑んだ。
「すぐ帰ってくるから。」とビョンホン。
「すぐ帰ってこなくていいから」と揺。
「安心した。少しいつもの君らしくなってきた」
彼はそういうと揺の頭をそっと引き寄せ髪にそっとキスをした。
「あ・・トイレ行ってくる」
揺はそそくさと立ち上がり小走りにトイレに駆け込んだ。
「大丈夫?」
彼の問いかけに「うん」と短く答えるのが今の彼女には精一杯だった。
帰ってこなくていいわけないじゃない。あなたが支えてくれていたからこの半月なんとか立っていられたのに・・・。今夜からあなたがいないと思うだけで不安で胸が痛くて仕方がないのに・・・
揺はしばらくじっとしゃがみこんだ後で大きく深呼吸をした。
そして顔を洗い歯を磨いた。ジメジメした気持ちを洗い流したかったから。
そして一声えいっと気合をいれ病室に戻る。
「どうした?気分悪い?」心配する彼の顔を見て揺はまた涙ぐみそうになる。
「ううん。顔洗って歯を磨いてたの。とってもすっきりしたわ。」
そういって笑う彼女の目は赤かった。
「そう。良かった。ねえ、揺、その本どんな話なのか説明してよ。」
彼は彼女の眼が赤い理由を聞くことなくそう言った。
理由は聞くまでもない。彼女の眼が赤いのは洗面所で泣いていたからに違いない。
口では帰ってこなくていいと言いながら泣いている彼女。
ぎゅっと抱きしめてずっと一緒にいるからと言えたらどんなにいいだろう。
でも、今夜自分はソウルに帰る。
彼女がどんなに辛くても傍についていて抱いてやることさえ叶わない。
ビョンホンは残される彼女ことを思い胸がつまった。
「どうしたの?ビョンホンssi?」
彼の想いとは裏腹にベッドに戻ってきた揺の顔は明るかった。
「えっとね・・主人公は少年。ははは・・さすがにあなたにも10歳の少年の役はできないわね。精神年齢ならいけるかもしれないけど」
揺はそういうとケラケラと笑った。
その笑顔が余計に切なくてこらえきれずにビョンホンは揺をぎゅっと抱きしめた。
彼の身体を通して揺にもその想いは伝わる。
「なんだ・・そんなに私と離れるのが辛くなっちゃったの?私ってそんなに魅力的かしら。」
「ああ・・胸も小さいし口も悪いけど・・・揺は最高だよ」
「嫌だ。泣いてるの?」と揺。
「悪いかよ。」とビョンホン。
「悪いわよ。そんな顔してたらみんなが心配するわよ。ほら、にぃ~って笑って」
揺はそういうとビョンホンの口角を指で引っ張った。
「口やっぱ大きいね」揺は笑いながら言った。
「うるさい。黙れ」ビョンホンはそういうと揺の口を自分の唇でふさいだ。


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